SHIPYARD
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2026.07.29

ロゴになにを託すか。デザインで呪いをかけないために。

家のそばにある、自家製チーズの美味しいカフェでご飯を食べていたときのこと。店主のお二人がお店のデザインで悩んでるんです、と話しかけてくださった。

お店をはじめて1年。少しずついろんなことが見えてきた。
あらためて自分たちが本当にやりたかったこと。大切にしたいことを。1年間の経験をこれからにどう活かすのか。どう現実に落としこむのか。悩んでいるという。

「モルク」という店名の由来は、チーズを成型するときに使う型「mold(モールド)」のdをひっくり返して、「molq(モルク)」にしたのが由来だそうだ。型にはめる生き方をひっくり返したい。他の道はない?どうしたらもっと楽しくなる?
そんなポジティブな問いを大切にしたかったという。

思わず
「なるほど!molqのqは問い(question)のQなんですね!」
と伝えた。すると「あ!それいいですね!!!」と返ってきた。お二人は特にそこまで意識していたわけではなかったという。

脱サラして東京と山梨で二拠点生活をしているお二人。それぞれにご家族もいて、子育てをしながら、日々わからなさの中で、自分たちなりに「こっち...かもしれない…!!」と毎度悩みながら、ここまで辿り着いたことが伝わってきた。

その日はいろんな雑談をしながら感じたことを素直に伝えて帰路についた。特にデザインの提案をしたわけではない。けれど、帰りの山道を下る車の中でどうにも「molqのQはquestionのQなんですね!」と口にしてしまったことが引っかかっていた。余計なお世話だけれど、「問いかけること」や「疑う行為」がアイデンティになってしまうと、この先お店の運営が難しくなってしまう日がくるような気がした。今の生活のままでいいのかな?そんな問いを持つのは素敵だ。でも、問いの中に身を置き続けるのが、しんどくなる日もあるかもしれない。

冷静に考え直してみる。

お二人の本質は問いにあるわけではない。むしろ立てた問いに、わからないなりに決断を繰り返しているところにある。そんな姿勢にあるのではないか。
日々の不安や葛藤。その中で、自分たちがたてた問いに試行錯誤を繰り返して向き合った先で「うん、これは美味しくできた!お客さんに食べてもらいたい。」そうやって、作られているチーズ。これは美味しいに決まってる。

僕はmolqに行くたび、その絶景とお店の雰囲気、そして出てくるご飯のおいしさに元気をもらっていた。その理由が、この時分かった気がした。ひとつひとつ、ふたりが勇気を出して決断したメニューを味合わせてもらっていたのだと思う。(当たり前と思うかもしれないけれど、とりあえずこれでいいんじゃない?というメニューがないのは僕はすごいことだと思う。)

Qが本質なのではないとすると、問い(Question)に対して決断(Definition)をしているのがmolqの本質だと思った。問いに対して、答え(Answer)があるわけではなくて、決断(Definition)をしている。
Q&Aではなくて、Q&D。この間をなんども行き来している。それこそがお二人のアイデンティティなのではないか。

これは二人に伝え直さねば…と思いたち、自分だったこんなロゴになるかなというものをつくり、説明資料と一緒に再びmolqを訪れた。

こうしてmoldのdをひっくり返してqに見立てたロゴは、正式に新たなお店のロゴに採用されることになった。

tagロゴデザイン tagロゴ tagカフェ tag

Yuka Tamiya
Yuka Tamiya

とても素敵なお話ですね。勉強になりました!

特に印象に残ったのは、「Q&AではなくQ&D」という考え方です。

デザインは答えを出す仕事だと思われがちですが、実際には、問いを立て、その問いと向き合いながら何度も決断を重ねていく営みなのだと改めて感じました。

だからこそ、その決断には、その人らしさや価値観が滲むのだと思います。

このロゴは、単なるデザインではなく、お二人の歩んできた時間そのものを形にしたシンボルですね。

Takayuki Uchibori
Takayuki Uchibori

この記事を読んで、一番印象に残ったのは「Q&D」という言葉です。

DXや業務改革の現場でも、「正しい答え」を探し続けて前に進めなくなる場面があります。しかし、実際に変革が進む組織は違います。

問いを立てる。
対話する。
そして、現時点での最善を決断し、実践する。

その繰り返しによって組織は少しずつ変わっていきます。

デザインも同じではないでしょうか。
ロゴは完成形ではなく、その会社やお店が大切にする価値観を映し出すものです。

だからこそ、「何を表現するか」だけでなく、「何を託すのか」を考えることが重要なのだと思います。