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デザインを「専門家の仕事」から「まちの共通言語」へ。旭川市のデザインシステムがグッドデザイン賞を受賞

市役所から届く案内文書、街中のポスター、地域イベントのチラシ。

私たちは日常的に、行政が発信するさまざまな情報に触れています。

しかし、それらの情報は、誰にとってもわかりやすく、一貫性を持って届けられているでしょうか。

今回注目するのは、北海道旭川市と株式会社KESIKIが取り組む「旭川デザインシステム」です。

2026年10月16日、同プロジェクトが2026年度グッドデザイン賞の「地域の取り組み・活動」カテゴリーで受賞したことが発表されました。

この取り組みの特徴は、ロゴやビジュアルを整えるだけでなく、デザインを市役所全体、さらには市民や地域の事業者が活用できる仕組みとして整備していることです。

■ まち全体の情報発信を、一つのデザインでつなぐ

旭川市は、家具や木工などのものづくり文化で知られる都市です。

2019年には、ユネスコ創造都市ネットワークのデザイン分野に加盟。デザインを通じた持続可能な地域の発展に取り組んできました。

その一環として、2024年6月から運用されているのが「旭川デザインシステム」です。

行政では、福祉、教育、観光、産業振興など、部署ごとに多種多様な情報を発信しています。

それぞれが個別に制作されると、伝え方や見た目がばらばらになり、市全体として統一した印象をつくることは容易ではありません。

そこで旭川市は、まちの象徴である徽章(きしょう)をもとに、共通して使えるデザインのルールを整備しました。

具体的には、シンボルマークや図形のパーツ、基本となる5色と四季をイメージした8色、文字のフォントなどを体系化。

ポスターや印刷物、Webサイト、名刺、さらには公用車やごみ袋など、さまざまな接点で一貫性のある表現を可能にしています。

ここで興味深いのは、すべての制作物を同じ見た目にすることが目的ではない点です。

共通のルールを設けながらも、用途や伝える内容に応じて組み合わせられる柔軟性を残しています。

「統一感」と「現場の創造性」を両立させる。

それが、このデザインシステムの重要な考え方です。

■ 誰もがデザインを実践できる仕組み

今回のプロジェクトで、特に注目したいのが実際の業務への導入方法です。

旭川市とKESIKIは、デザインガイドラインを整えるだけでなく、職員が日常業務で活用できるテンプレートや「ポスター生成ツール」を開発しました。

例えば、市役所の職員が地域イベントのポスターを制作する場合。

従来であれば、レイアウトや色使いを一から考えたり、制作ソフトを操作したりする必要がありました。

しかし、このツールでは、タイトルや開催日時、場所、写真などを入力することで、デザインシステムに沿った広報物を作成できます。

専門的なデザインスキルがなくても、一定の品質と統一感を保った情報発信ができるのです。

さらに、職員向けの研修やワークショップも継続的に実施。

KESIKIの発表によれば、これまでに400名を超える職員が参加し、デザインの考え方や活用方法を学んでいます。

これは、単なるデザインツールの導入ではありません。

デザインを外部の専門家に依頼して完成させるものから、組織の一人ひとりが日々の仕事に取り入れるものへと変えていく取り組みといえるでしょう。

■ デザインを市民や事業者にも開放する

そして、この仕組みは行政の内部だけにとどまりません。

旭川市は2026年1月から、デザインシステムを市民や地域の事業者も利用できるようにしました。

例えば、地域イベントのチラシ、企業の名刺、商品パッケージなどに旭川の共通デザインを取り入れることができます。

利用には原則として市への申請と承認が必要ですが、承認を受ければ無償で利用できます。

つまり、市役所だけが旭川らしさを発信するのではなく、市民や事業者も共通のデザインを使い、それぞれの活動を通じてまちの魅力を発信できる仕組みなのです。

さらに、旭川市ではデザイン人材を育成する「旭川デザインの学校」などの取り組みも進めています。

デザインを完成した成果物として配布するのではなく、地域の人々が使いながら育てていく。

この発想こそ、今回のプロジェクトの大きな特徴ではないでしょうか。

■ 考察:デザインの価値は、組織に根づいてこそ広がる

今回の旭川市の取り組みから考えたいのは、組織におけるデザインの位置づけです。

企業や行政がブランドを刷新するとき、ロゴやWebサイト、パンフレットなどを新しくすることは珍しくありません。

しかし、優れたビジュアルを制作するだけで、組織全体のコミュニケーションが変わるとは限りません。

重要なのは、そのデザインが日常の業務や意思決定の中で、継続的に活用されることです。

例えば、広報物をつくる職員が「どうすれば市民に伝わりやすいか」を考える。

地域の事業者が「自分たちの活動を通じて、まちの魅力をどう伝えるか」を考える。

デザインがこうした問いを生み出し、行動につながっていくことで、組織や地域に新しい価値が生まれる可能性があります。

もちろん、実際に市民の理解度や行政サービスの利用状況がどれほど改善したかは、今後の検証が必要です。

それでも、ガイドライン、制作ツール、人材育成、そして市民への開放までを一体的に進めている点は、他の自治体や民間企業にとっても参考になる取り組みだと考えます。

デザインの価値は、優れたデザイナーが何をつくったかだけではなく、そのデザインによって、組織や人々が何をできるようになったかにも表れる。

デザインを、一部の専門家だけが担うものから、組織や地域の共通言語へ。

旭川市の取り組みは、デザインを社会の意思決定に根づかせる可能性を示しているのではないでしょうか。

あなたの組織では、デザインは「誰かに依頼する仕事」でしょうか。それとも「みんなで活用する力」でしょうか?

KESIKIがプロデュースした「旭川デザインシステム」が2026年度グッドデザイン賞を受賞株式会社KESIKIのプレスリリース(2026年10月16日 19時30分)KESIKIがプロデュースした「旭川デザインシステム」が2026年度グッドデザイン賞を受賞旭川市デザインシステム | Asahikawa Design SystemAsahikawa Design System(旭川デザインシステム)は、市や市内の事業者が旭川市の魅力を発信したり、行政サービスを提供したりする際のルールと仕組みをまとめたものです。


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