生成AIの普及によって、デザイナーの働き方が大きく変わろうとしています。
画像生成、UI制作、リサーチ、プロトタイピング。これまで専門的なスキルや多くの時間を必要としていた作業が、AIによって効率化されつつあります。
しかし、今回注目したいのは、単なる制作スピードの向上ではありません。
AIの活用によって、デザイナーが担当する仕事の範囲そのものが広がっていることです。
グッドパッチが運営するデザイナー特化型キャリア支援サービス「ReDesigner」は、2026年8月に調査レポート「AI Design Databook 2026」を公開しました。
デザイナー222人と企業61社の回答から、AI時代におけるデザインの仕事と人材評価の変化が見えてきます。
■ デザイナーの78.8%がAIを毎日利用
調査によると、回答したデザイナーの78.8%がAIツールを毎日利用していることがわかりました。
AIが一部の先進的なデザイナーだけのものではなく、日常業務に取り入れられている実態がうかがえます。
では、AIは具体的にどのような変化を生み出しているのでしょうか。
注目したいのは、回答者の67.1%が、AIの活用によって担当する業務領域が広がったと答えていることです。
新たに担当するようになった業務として挙げられたのは、コーディング・実装が51.7%、企画・事業立案が44.3%、データ分析・定量調査が43.0%。
従来の制作領域を超え、開発や事業企画にまで活動範囲が広がっていることがわかります。
例えば、これまでUIデザインを担当していたデザイナーが、AIを活用して簡単なプロトタイプを実装し、ユーザーの反応を検証する。
あるいは、調査データの整理や競合分析を支援させ、事業の企画段階から議論に参加する。
こうした働き方が、より現実的な選択肢になってきたと考えられます。
AIによって変わるのは、デザインの制作方法だけではなく、デザイナーが事業に関わる範囲なのかもしれません。
■ 企業側の評価基準は、変化に追いついているのか?
一方で、企業側の調査結果には、興味深いギャップがあります。
回答企業の85.2%が、AIを踏まえたデザイナーの採用要件や評価基準の見直しを予定、または検討していました。
しかし、「AIを活用できるデザイナー」を明確に定義できている企業は、わずか8.2%にとどまっています。
つまり、多くの企業がAI時代に合わせてデザイン人材の評価を変える必要性を感じながらも、具体的に何を評価すべきかについては模索している状況がうかがえます。
ここで考えたいのは、AIスキルとは何を意味するのかということです。
ChatGPTやClaudeを使えることなのか。
AIによって制作時間を短縮できることなのか。
それとも、AIを活用して新しい課題を発見し、事業に価値を生み出せることなのか。
これらは似ているようで、異なる能力です。
実際、企業側の回答では、AIの活用方法をチームに展開できる人材への期待が72.1%に達しています。
AIを使いこなす個人の能力だけでなく、その知識を組織に共有し、成果につなげる力も求められているのです。
■ 仕事が広がる一方で、キャリアへの不安も
AIによる変化を、すべてのデザイナーが前向きに捉えているわけではありません。
今回の調査では、50.9%のデザイナーがAIの台頭によってキャリアに不安を感じると回答しました。
新しい業務に挑戦できる可能性が広がる一方で、自分の専門性は今後どう評価されるのか、どのようなスキルを身につけるべきなのかという悩みも生まれています。
こうした変化は、企業側にも新しい課題を突きつけます。
業務範囲が広がったからといって、一人のデザイナーにあらゆる専門性を求めればよいわけではありません。
それぞれの強みを尊重しながら、AIによって生まれた新しい可能性をどのように組織の力へと変えていくか。
役割分担や人材育成、評価制度まで含めた設計が、今後さらに重要になるでしょう。
■ 考察:これからのデザイナーの価値を、どう測るべきか
今回の調査から考えたいのは、デザイン人材の価値を何によって評価するかということです。
これまでデザイナーの実績は、完成したWebサイトやアプリ、ブランド、プロダクトなど、目に見える成果物を中心に語られることが少なくありませんでした。
しかし、AIによって制作そのもののハードルが下がれば、アウトプットだけでは、その人が生み出した価値を十分に判断できなくなる可能性があります。
例えば、同じUIを完成させた2人のデザイナーがいたとします。
一人は与えられた要件に沿って画面を制作した。
もう一人は、そもそも要件が適切かを検証し、ユーザーの課題を発見し直したうえで、事業にとって必要な機能を提案した。
完成した画面が似ていたとしても、その過程で生み出した価値は同じとは限りません。
重要なのは、どのような課題を発見し、何を根拠に判断し、どんな価値を生み出したのかということです。
そして企業側にも、その能力を適切に評価する仕組みが求められます。
AIの利用回数や使えるツールの数だけでなく、課題設定力、仮説検証力、専門性、チームへの貢献、事業への影響などを総合的に捉える必要があるのではないでしょうか。
もちろん、今回の調査は特定のサービスを利用するデザイナーと企業を対象としたものであり、日本のデザイン業界全体の実態を断定できるものではありません。
それでも、AIがデザイナーの働き方を変える一方、その価値を評価する仕組みはまだ発展途上にあるという重要な論点を示しています。
AI時代に問われるのは、何をつくれるかだけではなく、どのような思考と判断によって価値を生み出せるか。
デザインをビジネスの意思決定の中心へ。
その実現に向けて、私たちはデザイナーの成果物だけでなく、そこに至る思考やプロセスにも、もっと目を向ける必要があるのかもしれません。
あなたの組織では、デザイナーの価値を何によって評価していますか?
出典・参考資料
AI Design Databook 2026AI Design Databookは、ReDesignerがデザイナーと企業の双方を対象に独自調査を行い、「AI×デザイン×キャリア」の現在地を定量的に可視化したレポートです。
AIの可能性を、デザイナーの転機に。デザイナー特化型キャリア支援サービスReDesignerが「The Designers' Turn 2026」を開始|ニュース|Goodpatch グッドパッチ多様な角度で「デザイン×AI×キャリア」を見つめるイベントや調査、企業とタイアップした実践型プログラムを実施
デザイナーの78.8%、AIを毎日利用 キャリアに不安50.9% - 日本経済新聞デザイン会社のグッドパッチは、デザイナーの人工知能(AI)活用状況などを分析した調査リポート「AI Design Databook 2026」を公開。すでにデザイナーの大半がAIを毎日利用し、デザインの業務に加えて企画・リサーチなどの業務でも活用しているという実態が明らかになった。「AI Design Databook 2026」の調査目的はAI時代におけるデザイナーの働き方やキャリア観と、企