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TOTOが「トイレの常識」を問い直す。衛生設備を、心を整える場所へ変えるデザインとは?

私たちは普段、トイレをどのような場所として捉えているでしょうか。

用を足す場所。清潔で、使いやすく、短時間で利用できることが求められる空間。

しかし、そんな当たり前の認識を問い直すことで、まったく新しい価値が生まれるかもしれません。

2026年10月8日、TOTOは東京・六本木で開催されるデザイン展「Industrial Romanticism 2」への出展を発表しました。

今回注目したいのは、同社が発表したコンセプトモデル「思索の座(しさくのざ)」です。

■ トイレを「心を整える場所」として再定義する

「思索の座」は、トイレを単なる衛生設備ではなく、一人で静かに過ごし、自分自身と向き合うための場所として捉え直したコンセプトモデルです。

その発想の出発点は、トイレが日常生活の中で数少ない、一人になれる空間であるということ。

そこでTOTOのデザイナーは、便座をお気に入りの椅子のように捉え、木目の座面を取り入れました。

水まわりで安心して使えるよう防水処理を施しながら、木肌の温かみや季節ごとの触感を楽しめるようにしています。

冬にはカバーを添え、夏には木のひんやりとした感触を味わう。

単に座り心地や清潔性を追求するのではなく、そこに過ごす時間そのものの価値を見いだそうとしているのです。

「用を足すために座る」から「心を落ち着かせるために座る」へ。

同じ製品でも、捉え方を変えることで、新しい体験の可能性が広がります。

■ TOTOが大切にする「静かなる存在感」

この取り組みの背景には、TOTOが長年大切にしてきたデザイン思想があります。

それが「静かなる存在感」です。

TOTOのデザインは、衛生陶器の造形美や使いやすさの追求から始まり、水まわり全体の空間提案、ユニバーサルデザイン、そして世界各国の暮らしに寄り添うUXへと、その領域を広げてきました。

その根底にあるのは、製品やデザイナー自身が主役になるのではなく、あくまで使う人の暮らしを中心に考える姿勢です。

例えば、優れた技術を搭載していても、使う人が操作に迷ったり、生活空間の中で違和感を覚えたりするのであれば、必ずしも良い体験とはいえません。

技術をどのように暮らしになじませ、自然で心地よい体験へと変えていくのか。

TOTOでは、デザイナーが研究開発、製造、品質管理などの部門と対話を重ねながら、技術と美しさの融合を追求しているといいます。

デザインを外観の仕上げではなく、製品の価値を形づくる活動として位置づけている点が印象的です。

■ デザインが変えるのは、製品ではなく「意味」かもしれない

今回の「思索の座」は、現時点では展示用のコンセプトモデルであり、製品化が発表されたものではありません。

それでも、この取り組みには重要な示唆があります。

企業が新しい製品を開発するとき、既存製品の性能向上や機能追加から発想することは少なくありません。

トイレであれば、洗浄性能、省エネルギー性、清掃性、快適性などが代表的な改善領域でしょう。

もちろん、こうした技術的な進化は重要です。

一方で、今回のTOTOの提案は、性能を改善する前に「そもそもトイレは何のための場所なのか」という問いに立ち返っています。

これは、既存の製品カテゴリーに新しい意味を与えるデザインの可能性を示しています。

■ 考察:当たり前を問い直すことが、新しい価値を生む

今回の取り組みから考えたいのは、デザインにおける「問い」の重要性です。

私たちは日々、与えられた課題を解決しようとします。

しかし、そもそも設定された課題が、本当に解くべき課題なのか。

例えば「もっと快適なトイレをつくる」という課題と、「トイレで過ごす時間をもっと豊かにする」という課題では、生まれるアイデアが大きく変わるはずです。

前者は既存の機能を改善する方向へ、後者は新しい体験や価値を生み出す方向へ思考を広げます。

デザインの力は、与えられた問題を解決することだけでなく、解くべき問題そのものを発見し直すことにもある。

今回のTOTOの取り組みは、そんなデザインの可能性を感じさせてくれます。

あなたが日々関わっている製品やサービスにも、まだ問い直されていない「当たり前」はありませんか?


■出典・一次情報

「Industrial Romanticism 2」展に出展

展示は2026年10月30日〜11月8日、東京・六本木のAXISギャラリーで開催予定です。TOTOのほか、ソニーグループ、パナソニック、シャープなど計8社が参加します

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