「デザインをAIで自動生成する」
今では、そんな言葉も珍しくなくなりました。
生成AIを使えば、簡単な指示からWebサイトの画面やアプリのUIをつくることができます。
しかし、実際の企業のプロダクト開発では、画面がつくれるだけで十分なのでしょうか。
例えば、同じサービスなのに画面ごとにボタンの形が違う。デザイナーが作成したデザインと、エンジニアが実装した画面に微妙な差異がある。機能を追加するたびに、似たようなUIを一から設計している。
こうした問題は、AIが普及しても自動的に解決するわけではありません。
むしろ、誰もが簡単に画面やコードを生成できるようになることで、デザインの一貫性をどう維持するかは、さらに重要な課題になり得ます。
今回注目するのは、株式会社Sun Asterisk(Sun*)が2026年10月15日に発表した、AI駆動開発向けデザインシステム「Sun Design System Nova」です。
■ デザインと開発をつなぐ「共通の設計基盤」
Novaは、Sun*が1,000以上のプロダクト開発で培った知見をもとに整備したデザインシステムです。
そもそもデザインシステムとは何でしょうか。
簡単にいえば、サービスの見た目や操作性を統一するためのルールと、繰り返し利用できるUI部品をまとめた仕組みです。
例えば、ボタン、入力フォーム、文字の大きさ、色、余白、アイコンなど。
これらをプロジェクトごとに一から考えるのではなく、共通の設計ルールに従って組み合わせることで、品質のばらつきや作業の重複を減らすことができます。
Novaの特徴は、こうした仕組みをデザイナーだけでなく、エンジニアやAIエージェントも利用できる形で提供している点です。
具体的には、Figmaのデザインライブラリ、ReactのUIコンポーネント、Storybookによる部品の確認環境、AIと接続するためのMCP連携などを備えています。
デザインを「完成した画面」ではなく、繰り返し使い、改善できる組織の共通資産として扱う。
ここにNovaの重要な特徴があります。
■ FigmaとReactをつなぎ、設計と実装のズレを減らす
Novaの具体的な機能として注目したいのが、「Figma Code Connect」です。
例えば、デザイナーがFigmaで「送信ボタン」を設計したとします。
従来は、エンジニアがそのデザインを見ながら、色や余白、文字サイズなどを確認し、コードとして再現する必要がありました。
ところが、デザインと実装の間に十分な共通ルールがなければ、見た目のズレや実装の重複が生じやすくなります。
Code Connectは、Figma上の部品と、実際に開発で使用するReactコンポーネントを対応づける仕組みです。
これにより、デザイナーが設計したボタンと、エンジニアが利用するボタンを、共通の定義に基づいて扱いやすくなります。
さらに、MCPというAI連携の仕組みを活用することで、AIエージェントがデザインシステムの情報を参照し、定められたルールに沿って画面やコードを生成することも可能になります。
例えば「会員登録画面を作成して」と指示する際も、何のルールもない状態から生成するのではなく、あらかじめ用意されたコンポーネントや設計基準を利用することができます。
重要なのは、AIが画面を生成すること自体ではありません。
AIが、組織のデザインルールを理解したうえで制作を支援できることです。
■ 初期構築工数を最大80%削減。その意味とは?
Sun*はNovaの導入によって、UI基盤をゼロから構築する場合と比較し、画面設計に着手するまでの期間を最大80%削減できると試算しています。
ただし、この数値は同社の想定条件に基づくものであり、プロダクト全体の開発期間が80%短縮されるという意味ではありません。
それでも、共通部品や設計ルールを事前に用意することには、明確な意義があります。
特に新規事業では、サービスが市場に受け入れられるかどうか、まだわからない段階で多くの時間や費用を投入することがあります。
画面の基礎設計を効率化できれば、ユーザーへの検証や機能改善に、より多くの時間を充てられる可能性があります。
Novaではデザインシステム自体を無償公開し、企業独自のカスタマイズや開発支援などを有償サービスとして提供しています。
共通化できる基盤は共有し、個別のサービスに必要な価値づくりに集中する。
こうした開発の考え方が、今後さらに広がるのかもしれません。
■ 考察:AI時代のデザイナーに求められるもの
今回の取り組みから考えたいのは、AIによってデザイナーの役割がどう変化していくかということです。
これまでデザイナーには、画面の美しさや操作性を設計するだけでなく、細かなUI部品の制作や仕様の整理、エンジニアとの認識合わせなど、多くの業務が求められてきました。
AIやデザインシステムによって、こうした作業の一部が効率化されれば、デザイナーは別の領域に力を注ぎやすくなるかもしれません。
それは、ユーザーが本当に困っていることを発見すること。
どのような体験を提供すべきかを考えること。
事業の方向性を踏まえ、何を優先して開発すべきかを判断すること。
もちろん、AIによって制作業務のすべてが不要になるわけではありません。
デザインの品質を評価し、使いやすさを検証し、サービスとしての一貫性を保つためには、引き続き専門的な知識と判断が必要です。
また、デザインシステムの存在だけで優れたユーザー体験が保証されるわけでもありません。
重要なのは、効率化によって生まれた時間を、何に使うかです。
AIが「どうつくるか」を支援するほど、人間には「何を、なぜつくるのか」を考える力が求められる。
Novaの登場は、単なる開発ツールの進化ではなく、デザインを組織の知識や意思決定の仕組みとして捉え直すきっかけになるのではないでしょうか。
デザインの価値は、つくる技術だけでなく、何をつくるべきかを判断する力にもある。
AI時代のデザインの可能性について、改めて考えさせられる取り組みです。
あなたは、AIによってデザイナーの仕事はどのように変わっていくと思いますか?
Sun*、AI駆動開発向けデザインシステム「Nova」を無償公開 – Sun*Figma ✕ MCP連携で初期工数を最大80%カット、最速でUI基盤立ち上げ 株式会社Sun Asteris
Sun* Design System Nova1,000以上のプロダクト開発で培った、プロダクトを前進させるデザインシステム「Nova」
デザインシステムがAIと接続されることで、UIの品質や一貫性を担保しやすくなるのは、大きな進化だと思います。
一方で、少し考えたいのは「標準化」と「独自性」の関係です。
誰もが一定水準のUIを短時間でつくれるようになったとき、サービスの競争優位はどこから生まれるのでしょうか。
もちろん、独自性は見た目の違いだけではありません。ユーザー理解や体験設計、事業そのものの価値にも表れるはずです。
ただ、効率化を追求するほど、結果として似たようなサービスが増えていく可能性もある。
これからのデザイナーには、共通化すべきものと、あえて独自性を追求すべきものを見極める力が、より求められるのかもしれません。