どれだけ綺麗につくっても、向かう方向が違えば意味がない。
デザイナーの仕事というと、
ロゴをつくる。
Webサイトをつくる。
グラフィックをつくる。
そんな「つくる仕事」を思い浮かべる人は多いかもしれません。
しかし、その前には本来、
誰に届けるのか。
何を伝えるのか。
なぜ、それをつくるのか。
そもそも、本当につくる必要があるのか。
考えるべきことがあります。
今回Spotlightでお話を伺ったのは、SOUZOU / Studio。
現在、自らを「考える制作会社」と表現するSOUZOU / Studioですが、デザインを始めた頃の原動力は、純粋に「かっこいいものをつくりたい」という気持ちでした。
長く実務を経験し、独立し、クライアントと向き合う中で、「綺麗につくること」は目的ではなく手段なのだと気づいていったといいます。
「つくる人」から「一緒に考える人」へ。
SOUZOU / Studioが大切にするデザインについて、FeatUと考えます。
「かっこいいものをつくりたい」から始まった
FeatU
まず、デザインの仕事を始めた頃と現在では、仕事に対する考え方は変わりましたか。
SOUZOU / Studio
かなり変わりました。
もともとは何かを表現したり、形にしたりすることが好きで、自分がつくったものが誰かに届いて、反応が返ってくることにワクワクしていました。
当時は本当に、
「かっこいいものをつくりたい」
という気持ちが強かったと思います。
昔は「どれだけ綺麗なアウトプットを出せるか」が自分の仕事だと思っていました。
でも今は、
「その制作物が、クライアントのビジネスや誰かの日常をどう動かしたのか」
を見るようになりました。
見た目の美しさは大切ですが、それ自体がゴールではない。
何かを実現するための手段なんだと思っています。
徹夜でつくって、「何のためだっけ?」となった
FeatU
「考えること」を大切にするようになったきっかけは何だったのでしょうか。
SOUZOU / Studio
苦い経験が何度かあったからです。
とにかく手を動かして、徹夜して、綺麗なものをつくる。
でも完成してみると、
「これ、何のためにつくったんだっけ?」
となってしまう。
事業の目的からズレていたんですよね。
そこで、
「どれだけ手を速く動かしても、向かっている方向が間違っていたら意味がない」
と気づきました。
どれだけビジュアルが洗練されていても、クライアントの本当の悩みや、受け取る人の文脈に合っていなければ、一過性で終わってしまう。
表面的な綺麗さだけでは、ビジネスの課題も、人の心も動かない。
それが今の仕事の仕方につながっています。
パソコンを開く前に、「問いの解像度」を上げる
FeatU
では現在、制作に入る前に何を大切にしていますか。
SOUZOU / Studio
一番大切にしているのは、
「問いの解像度を上げること」
です。
例えば、
「この依頼の背景にある本当の課題は何なのか」
「この施策が成功した状態とは何なのか」
を、クライアントと一緒に整理します。
「Webサイトをつくりたい」と言われたから、すぐWebサイトをつくるわけではありません。
なぜWebサイトなのか。
誰に何を伝えたいのか。
その人にどう動いてほしいのか。
そこから考えます。
場合によっては、
「そもそもこれ、つくらなくていいかもしれませんよね」
と言えることも、プロの価値だと思っています。
つくる対象を間違えていたら、どれだけ優れたデザインをしても意味がありません。
「考える制作会社」が意味すること
FeatU
それがSOUZOU / Studioの「考える制作会社」という言葉につながっているのでしょうか。
SOUZOU / Studio
そうですね。
世の中には、言われたものを綺麗につくれる会社がたくさんあります。
僕たちは、その前の部分を大切にしたい。
制作ソフトを開く前に頭を使う。
何を伝えるべきなのか。
なぜ伝わっていないのか。
本当に必要なのは何なのか。
クライアントと一緒に問いに向き合う。
そこに自分たちが提供できる価値があると思っています。
昔はデザインを「見た目をかっこよく飾ること」だと思っていました。
今は、
「複雑な物事を整理して、人と人、企業と社会の関係性を交通整理すること」
も含めてデザインだと考えています。
発注者ではなく、「同じ船を漕ぐ人」
FeatU
そうなると、企業とデザイナーの関係も変わりますよね。
SOUZOU / Studio
そう思います。
僕が大切にしているのは、上下関係ではなく、
同じ船を一緒に漕ぐ「伴走者」であることです。
その事業について一番熱量を持っているのは、当然クライアントです。
だから、まずはその思いや考えをしっかり聞く。
そのうえで、デザイナーとして別の視点が出せるなら提案する。
お互いの専門性をリスペクトしながら、本音で議論できる関係が理想です。
以前のような「言われたものを綺麗に納品する業者」ではなく、
「事業の課題を一緒に解くビジネスの相棒」
でありたいと思っています。
AI時代ほど、「何をつくるべきか」が重要になる
FeatU
AIによって、「つくること」のハードルは急速に下がっています。
これからデザイナーの価値はどう変わると思いますか。
SOUZOU / Studio
価値は間違いなく上流へ移っていくと思っています。
絵を描く。
コードを書く。
形にする。
そうしたことは、AIがものすごいスピードでできるようになっていく。
だからこそ、
「何をつくるべきか」
「誰のために、何を解決するのか」
という問いを立てる力が、さらに重要になると思います。
AIは「どうつくるか」の選択肢はたくさん出せます。
でも、
「そもそも何を目指すのか」
という文脈を決めるのは、人だと思っています。
独自の視点や美意識。
そして、迷っている人と一緒にゴールを探す人間力。
そうした部分の価値は、むしろ高まっていくんじゃないでしょうか。
ポートフォリオだけでは、「どう考える人か」は分からない
FeatU
FeatUでは、完成した作品だけではなく、デザイナーの思考やプロセス、価値観まで見えるようにしたいと考えています。
SOUZOU / Studio
そこにはすごく可能性があると思います。
作品を見れば、その人の技術や表現力は分かります。
でも、
なぜこの答えにたどり着いたのか。
何を考えたのか。
何に悩んだのか。
どうクライアントと向き合ったのか。
そういう泥臭い思考のプロセスは、完成した作品だけでは分かりません。
これからは、
「このスキルがあるから発注する」
だけではなく、
「この人のものの見方や哲学に共感するから、一緒に仕事をしたい」
という関係が増えると面白いと思います。
企業とデザイナーも、「発注する側/つくる側」という垂直な関係ではなく、お互いの専門性を持ち寄る水平なパートナーになっていく。
FeatUには、そんな人たちが熱量や哲学でつながる場所になってほしいですね。
完成した作品だけではなく、
「今、こんな問いに悩んでいる」
「こんな未来をつくりたい」
という思考が飛び交う。
熱量の高い“大人の秘密基地”のような場所になったら面白いと思います。
良いデザインとは、「迷いを晴らすもの」
FeatU
最後に、SOUZOU / Studioにとって「良いデザイン」とは何でしょうか。
SOUZOU / Studio
見た目が美しいことは大前提です。
でも、それだけではなく、
それに関わる人たちの迷いをスッと晴らし、向かうべき方向へ自然と背中を押してくれるもの。
そんなものが良いデザインだと思っています。
事業や日常の中に、静かだけれど確かな推進力を生む。
僕は、そういうデザインをつくっていきたいですね。
編集後記
SOUZOU / Studioのデザイン観は、最初から今の形だったわけではありません。
「かっこいいものをつくりたい」。
そこから多くの制作を経験し、
綺麗につくったのに、目的からズレていた。
一生懸命つくったのに、結果につながらなかった。
そんな経験を重ねる中で、問いは徐々に変わっていきました。
「どうつくるか」から、
「なぜつくるのか」。
そして、
「そもそも、何をつくるべきなのか」。
その現在地が、「考える制作会社」という言葉なのだと思います。
AIによって「つくる」技術がさらに身近になるからこそ、
何を見るのか。
何を問うのか。
何を選ぶのか。
そんな完成物には映りきらないデザイナーの思考そのものが、これまで以上に価値を持つ。
SOUZOU / Studioとの対話から、そんなこれからのデザイナー像が見えてきました。
Profile
SOUZOU / Studio
グラフィックや映像などを手掛けるデザインスタジオ。
長年デザインに携わり、現在は「考える制作会社」として、完成物を制作するだけでなく、「誰に、何を、どう伝えるのか」という制作前の整理や設計からクライアントと伴走。
事業やブランドが持つ軸と表現を一貫して形にすることを大切にしている。
souzou のProfile | FeatUsouzouのProfile